独立・開業するための方法とは?人気の業種やフランチャイズ開業について解説
独立・開業とは会社から独立して事業を始めること。独立・開業の流れや向いている業種などを解説します。
独立や開業は、雇用先の会社から独立して、自ら新たに事業を始めることです。独立・開業にあたっては、しっかりと準備し段階を踏めば、行き当たりばったりにならずスムーズに事業を始められます。
独立・開業に向いている業種やフランチャイズなどの形態も、良く検討しましょう。
今回は、独立および開業について解説します。
※この記事を書いている「創業手帳」ではさらに充実した情報を分厚い「創業手帳・印刷版」でも解説しています。無料でもらえるので取り寄せしてみてください
この記事の目次
独立・開業と起業に違いはあるのか
独立や開業、そして起業に関しては広義では同様であるものの、細かい部分では異なる意味合いを持つ言葉です。では、これらの違いとはどのような点かを見ていきます。
独立とは脱サラして事業を始めること
独立は、もともと会社に雇用されていた人が会社を辞め、脱サラをして自ら事業を始めることを指します。
いわば会社からの独り立ちであるため、もともと個人事業主や法人の経営者である場合には独立とは言いません。
事業を始めること全般が開業
開業とは、これまでサラリーマンであったか否かを問わず、事業を始めることそのものを意味します。
もともと自分が持っている資格やスキルを生かして事業所を開く場合や店舗を持つ場合などに、「開業する」と言うことが多いです。
起業は特に新しい事業を始める時に使う
起業に関しては、事業を始めるの中で、これまで社会に存在していない真新しさを持つスタートアップやベンチャー企業の起ち上げに適した言葉です。
社会への新たな貢献を期待されていること、また、事業に対してのチャレンジ精神や向上心、革新的思想を持っている経営者を起業家と呼ぶ場合もあります。
社会情勢から独立・開業する人が増えている
近年の社会情勢を鑑みると、独立・開業を検討する人が増加しているというデータがあります。こちらでは、そのデータについて紐解いて見ていきましょう。
独立・開業に乗り出す人が増加する理由
感染症拡大による各業界の業績が低迷しているため、企業では退職者の増加が見られています。
特に、企業側から従業員に退職勧告をするケースが多く、これらの事情で退職した人が新たに独立・開業を考えている傾向にあります。
また、退職者だけではなくこれから就職する若年層に関しても、就職率の低下を見越して自ら開業しようと考えている人が多いようです。
年代としてはシニア層が多い
独立・開業を検討している年代としては、特に50代の増加率が高いとのデータが出ています。
これには、退職後の第2のキャリアを始めることだけではなく、開業するにあたって潤沢な資金の貯蓄があることも理由にあげられるでしょう。
さらに、家庭を持ち子育てが終了した後で、金銭や時間に余裕ができる年代が50代周辺であることも、独立・開業を後押しする要因となっていると考えられます。
独立・開業するメリットとデメリット
独立・開業してサラリーマンという立場を離れ、自らの力で事業を始めるにあたり、メリットとデメリットがそれぞれに存在します。以下では、メリット・デメリットそれぞれを解説します。
メリット4つ
①やりがいを感じられる
独立・開業するにあたっては、雇用先企業の経営方針を気にすることなく、自分のやりたい事業を始められます。
また、サラリーマン時代には採用されなかった自分のアイデアや企画を生かせるため、仕事への責任感も生まれてくるかもしれません。
②自由な時間に働ける
これは、企業に雇用されない独立・開業者ならではのメリットです。
企業に決められた出勤時間や退勤時間に縛られず、自分に都合の良い時間に働けます。
仕事の期日を守るのは当然ですが、期日までのスケジューリングも自分で行えるため、おのずと自由度は高くなります。
③成功すれば高収入につながる
独立・開業して自ら事業を進めていけば、成功して高い実績を得られた時に高収入を得られる可能性があります。
場合によっては、サラリーマン時代の数倍も稼げるケースもあり、事業が社会に受け入れられれば収入の大幅アップも夢ではありません。
④年を取っても働き続けられる
独立・開業した場合、通常のサラリーマンのように定年制度がないことから、自らの体力や気力が続く限りはいつまでも働けます。
このような点を考えると、自らのコンディションと相談しながら仕事を続けて行けることは、大きなメリットといえるでしょう。
デメリット3つ
①収入が安定しない
デメリットとしてあげられることは、収入が一定ではない点です。独立・開業するとその時の事業実績によって収入の増減が激しくなることが予想されます。
自分が事業に注力するだけではなく、事業が軌道に乗るか否かも重要なポイントです。上記のメリットのように、高収入を狙えることと背中合わせのデメリットといえます。
②スケジュール管理が大変
こちらも、メリットであげた時間の自由と裏返しにあるデメリットであり、自分自身ですべてのスケジュールを管理しなければなりません。
仕事量を増やすのも減らすのも自分次第であり、裁量を間違うと長時間労働や収入減につながる可能性があります。
③事業に失敗した責任は自分にある
メリットにあったように、事業に成功すれば高収入も夢ではありませんが、逆に失敗した時には、そのしわ寄せはすべて自分に返ってきます。
独立・開業してからの失敗は、時に多額の負債を抱えたり社会的信用をなくしたりなどのリスクが伴うことは覚えておかなければなりません。
独立・開業するまでの流れ
こちらでは、独立・開業にあたっての流れについて紹介します。
事業形態を決める
独立・開業するにあたり、個人事業主とするか法人を起ち上げるかを選択します。
・個人事業主の場合
個人事業主であれば開業手続きが比較的容易であり、自分のペースで事業を進めやすい一方、社会的信用度を得にくい面もあります。
ただし、事業の拡大が目的ではなく、個人で小規模な事業を進めることを望むのであれば、個人事業主として開業しても十分です。
・法人の場合
法人を起ち上げる場合、定款作成や登記、取締役の決定など、会社法に基づいた手続きが煩雑であることは否めません。
しかし、資金調達や取引きに関しては、法律的に法人として認められた後ろ盾があり、個人事業主よりも有利に事業を運べる可能性が大きいです。
これから事業を拡大していくビジョンがあれば、最初から法人としてスタートしたほうが今後の展開をスムーズに運べます。
ビジネスの方向性を固める
これから始める事業に関して、どのような方向性で進めるかを固めていきます。今、自分の頭の中にあるアイデアについて実現できる方法を具体的に決める作業です。
この時点で決めることは、以下のような項目です。
-
- どのようなターゲット層に訴求するものか
- ターゲット層に響く商品やサービスはどのようなものか
- 商品やサービスはリーズナブル路線か高級志向か
- 商品やサービスの提供について、店舗を構えるのか事業所で取引きを行うか
- 提供するサービスが持つ強みはどのような点か
- 競合他社の動向はどうなっているか
- 上記を包括し、自分が事業を行う目的は何か
そして、ここで固めた方向性をもとに、後述する事業計画の立案を行います。
事業計画を具体的に立てる
上記で決めた方向性をもとに、具体的な事業計画を立てていきます。
事業計画とは、商品やサービスを提供するにあたり、生産や販売コストに加えて、事業所や在庫の管理コストなどを考慮し、1年間に得られる利益を数値とするものです。
そして、その利益目標を達成するために、1日・1カ月単位での目標を立てます。
事業が軌道に乗った場合だけではなく、立ち行かなくなった場合のリスクヘッジも考慮すべきです。
この事業計画を具体的にし、事業計画書としてデータに起こすことができなければ、金融機関からの融資や助成金の申請が難しいでしょう。
事業計画書には、主に以下のような内容を盛り込みます。
-
- 事業所の所在地、設立日、資本金など
- 事業目的、内容
- 市場マーケティング、分析結果
- 経営における具体的な計画、資金調達方法
- 売上げやコストを見越した収支計画
- 現時点での課題やリスクの想定、解決策
開業資金を準備する
次に、開業資金を工面する方法を考えます。開業資金の調達には、以下の3つの方法が考えられます。
-
- 自分の貯蓄などの自己資金
- 金融機関などからの融資
- 地方自治体で実施している助成金や補助金制度の利用
開業資金の使い道には、事業所の賃料や机、椅子などの事務用備品、電話やPCなどの通信機器、商品やサービスを生産するための原材料、宣伝コストなどがあげられます。
また、店舗を経営するなら、内装や外装工事費なども含まれるでしょう。
必要な金額を算出して自己資金で賄えるか、融資もしくは助成・補助が必要かを考慮し、自分に合った方法で資金調達してください。
開業資金についてめどが立ったら、事業を進めるために必要な仕入れや販売管理費、税金のランニングコスト含む運転資金の準備を、向こう3カ月分程度行います。
これらをそろえた後に、事業が軌道に乗るまでの自らの生活資金についても考え、資金調達には余裕を持たせるようにしましょう。
開業届の提出などを行う
開業資金を使用して、事業開始のための準備が整えば、税務署や公証役場・法務局、地方自治体や年金事務所へ、それぞれ開業に関する手続きを行います。
個人事業主や法人が行うべき手続きには、主に以下のようなものがあります。
- 【個人事業主】
-
- 開業届出書、青色申告承認申請書、青色事業専従者給与に関する届出書(家族を従業員とする場合)の提出(税務署)
- 【法人】
-
- 法人設立届出書、青色申告承認申請書、給与支払い事務所等の開設届出書などの提出(税務署)
- 定款認証(公証役場)
- 会社設立登記申請(法務局)
- 法人設立届出書の提出(地方自治体)
- 健康保険・厚生年金保険新規適用届、被保険者資格取得届の提出(年金事務所)
その他、事業において各種許認可が必要であれば、該当の管轄官庁に申請を行ってください。
独立・開業で人気の業種
こちらからは、独立・開業に向いている人気の業種についてあげていきます。
資格や経験を生かす
例えば、弁護士や税理士、美容師などの資格を取得していれば、それを生かして独立・開業すると良いです。
国家資格でなくとも、ネイリストやエステティシャンは民間の資格が存在するため、取得すれば独立・開業に有利です。
金融や経営の知識や経験が深い人は、コンサルティング業を開業すれば少ない資金で始められるでしょう。
インターネットを利用する
インターネットを利用したビジネスは、数多く存在しています。例えば、ブロクを運営し、そこに広告を設置し広告収入を得るアフィリエイトは、代表的なものです。
インターネットショップを開設すれば開業資金も少なくて済みます。
また、システムエンジニアやWebデザイナーなどのWeb関連の仕事も、技術があれば比較的簡単に開業できます。
講師として活躍する
取得している資格や経験は、自ら生かすだけではなく人に教える形でも有効です。講師には、音楽や芸術、フィットネスなど様々なものがあります。
いずれも、自分の持っているスキルを人に伝授するものであるため、最低限のスペースや備品があれば開業できます。
自宅のスペースを教室として利用するケースも多く、自宅で行えば開業資金を抑えられるでしょう。
レンタル業や代行業も人気
近年、レンタル業には様々な需要が生まれ、各種機材や備品のほかに洋服やバッグ、靴などのアパレル関係や家具のようなレンタル業も登場しています。
代行業では家事や運転代行は浸透しつつありますし、ペットの世話代行や営業代行など、可能性はほぼ無限にあり、事業所がなくとも始められます。
フランチャイズシステムを利用する方法も有効
独立・開業の手段のひとつとして、大手企業の商標やノウハウを利用して事業を始められるフランチャイズシステムも有効です。以下では、フランチャイズシステムについて説明します。
フランチャイズの仕組みについて
フランチャイズシステムでは、本部の持つ商標や経営ノウハウについて、契約を交わした加盟店に使用権を与え、加盟店は本部のブランド力を借りて事業を行えます。
経営における仕入れや集客や宣伝についても本部からのバックアップを受けられ、業界未経験でも始めやすいシステムです。
加盟店は本部の商標使用やサポートを享受する代わりに、売上げの一部をロイヤリティとして本部に支払います。
開業資金としては100万円~300万円程度で始められる場合が多く、ロイヤリティを支払ったとしても事業を軌道に乗せられることが期待できます。
フランチャイズシステムを採用している業種とは
フランチャイズシステムを導入している主な業種には、以下のようなものがあります。
-
- コンビニ
- リサイクルショップ
- 各種飲食店
- ネットカフェ
- 学習塾
- 介護施設
- クリーニング店
フランチャイズによる独立・開業のメリット3つ
①経験がなくても始められる
その業種に関して経験がなくとも、本部からのサポートやマニュアルにより事業を始められることが大きなメリットです。
独立・開業したいけれど自身では事業内容を決められない、経験がないため迷っているという人にはおすすめです。
②事業計画は本部で立ててくれる
フランチャイズの本部では、すでに事業計画が明確にできあがっており、経営ノウハウもしっかり固まっています。
これは、事業を拡大してきた本部が利益を出すために実際に役立てたものです。
加盟店は、本部が立てた事業計画や経営ノウハウをそのまま受け継げるため、利益を生み出しやすい経営を可能にします。
③ブランド力で顧客を集めやすい
本部が持っている強いブランド力やネームバリューを借りて経営するため、顧客にその存在を知らしめやすく、ブランド名で顧客を集められるでしょう。
加えて、本部が持つ宣伝ノウハウも合わせれば、見込んだ集客はほぼ得られることが期待できます。
フランチャイズによる独立・開業のデメリット3つ
①ロイヤリティが発生する
前述のように、本部の商標およびノウハウの使用権、また、サポートを受ける対価としてロイヤリティが発生します。
このロイヤリティについては、もし思うように利益を得られなかった場合にも同様に発生するものであるため、場合によっては経営を圧迫することになりかねません。
②自由な運営が制限される
フランチャイズでは、本部の事業計画や経営方針をそのまま引き継げることがメリットですが、これらを逸脱した自由な運営ができない点はデメリットにもなりえます。
本部としては、ブランドイメージを保持するために、加盟店にはマニュアルに沿った経営を指示します。独立・開業にあたって自由度を重視する人にとっては、向いていないかもしれません。
③契約期間中の解約が難しい
フランチャイズシステムでは、本部と加盟店の契約に期間が存在します。そのため、加盟店の自己都合で契約を解除する場合は、高額の違約金が発生することが多いです。
また、解約した後の一定期間、同業他社でフランチャイズ契約を結ぶことが禁止されているケースがよく見られます(競業避止義務)。
これは、加盟店として本部のノウハウや機密事項について、同業他社への流出で不利益を被ることを防ぐためです。
まとめ
独立・開業をすることは、主に脱サラをして独自で事業を始めることを指します。
これまでの企業の後ろ盾がなくなるため、事業には責任と十分な計画を持って臨んでください。
独立・開業に向いている業種は各種あるほか、フランチャイズシステムの利用も独立・開業しやすい方法のひとつです。
いずれにしても、自分に合った業種や形態を選んで独立・開業するのがおすすめです。
(編集:創業手帳編集部)